ミリタリー詐欺に騙されない最低限の知識(年金・引退)

著者: エド先生
2019年12月5日12時00分

退役するのにお金はかからない

米国国防総省: Soldiers do not have to pay for early retirement.

和訳: 兵士は、早期退職するとき、お金を払う必要はありません。

軍隊をキャリアの一つとしているアメリカでは、基本的に20年間働かなければ引退できません。

ただし、「Temporary Early Retirement Authority (TERA)」(早期退職を管理する機関)は最近(2018年2月)までありました。

TERA」があった時、早期退職を希望する兵士は、「TERA」申請することで、重大な任務を任せられていない限り、早期退職が許可されました。対象は、15年以上、20年未満の現役兵士でした。

なぜアメリカの政府が、兵士の早期退職を許していたのか?

簡単に言うと、兵士の数が多すぎたからです。

戦争が起こると、兵士がたくさん入隊します。そして戦争が終わっても、兵士はそのまま軍隊に残ります。戦争中は軍隊にたくさんの予算が当てられますが、戦争後は戦中の特別予算がなくなるので、人権費が大変になってきます。

人件費を減らすのに、兵士の数を減らさなければいけません。しかし、国は兵士をクビにすることができません。立場上、国のために命をかけている兵士を、リストラすることはできないからです。そこで国が「早期退職」プログラムを作ったのです。

TERAは、ソ連との冷戦が終わった時に初めて作られ(1993年から)、適度な人数まで兵士の数が減らされたのち、停止されました。そして、イラクとアフガニスタンとの戦争の後(2012年から)また兵士の数を減らす必要があったので、TERAはまた復活し、2018年に停止されました。TERAについて(英語)

つまり、兵士が早めに引退することは、国の予算の都合のためでした。

詐欺師

あなたと早く一緒になりたいし、軍隊の仕事がつらいので辞めたいが、辞めるのにお金が必要。

TERA」の仕組みを知れば、この嘘が見え見えでしょう。

まとめ

アメリカは戦争が終わると、軍隊の数を減らす必要があるので、しばらくの期間、兵士の早期退職を募ります。国としては、早期退職してほしいので、早期退職のために兵士にお金がかかることは一切ありません。

年金もらうのにお金はかからない

「引退」の話に続いて「年金」にも触れておきましょう。

詐欺師は年金の話が大好きです。たとえば、「退役後に高額な年金を確実にもらえるけど、少し手数料がかかります。わけあって、手数料を払うことができないため、その手数料を代わりに払ってくれたら、年金を分けてあげるよ。」

繰り返しになりますが、米軍はブラック企業ではありません。「年金をもらうのに、手数料が発生する」というようなインチキはありません。

年金は、そもそも、毎月、月給から差し引かれたものなので、もらう時に手数料が発生することはあり得えないのです。

まとめ

兵士は、年金をもらうために、お金を払う必要はまったくありません。

詐欺師の定番パターン

詐欺師の大好きな嘘には、いくつかパターンがあります。

これらのパターンを知っておけば、詐欺に、より早く気づくことができるようになるでしょう。

よくある高額詐欺の手口
  1. 詐欺師は、「私は高額を確実にもらえる」と言います。(欲張りの餌)
  2. ただ、この「高額」をもらうためには、手数料を支払わなければいけません。
  3. そして、今、わけあって、手数料を支払うお金が手もとにありません。
  4. あなたが代わりに手数料を払ってくれたら、「高額」を分けます。

こんなわかりやすい手口、誰も騙されないと思うかもしれませんが、実は毎年、数百億円以上の被害が発生しています。そこで、遺産を例にして、詐欺師の工夫した手口を分析しましょう。

遺産を狙った手口のポイントは、大金と、さらなる大金を比べることで、少ないほうの大金が少額に見えてくることです。

たとえば、遺産が1億円で、手数料が95万円とします。

本来、95万円は大金です。一般的に、95万円もする買い物、なかなかしないでしょう。

詐欺師が「愛しているから、95万円をください」と言ったら、普段は「何言ってんだ、バカなの?」となるはずです。

しかし、1億円をもらえるための手数料が95万円」と言われたらどうでしょうか?

並んでいるゼロの数は、見た者の思考を停止させてしまうかもしれません。そしてその時、欲に負けて95万円を送ってしまうかもしれないのです。つまり、このようなトリックは間違いなく詐欺だということを、事前に知っておかなければなりません。

まとめ

詐欺師による、この手口のポイントは、大きい金額(手数料)とより大きい金額(たとえば、遺産の総額)を比べることで、大きい金額が小さい金額に見えるよう仕向けることです。

マジックプライス「1万ドル」

ちなみに、詐欺師の求めている金額は、1万ドル(100万円)を超えることはめったにありません。その理由はわかりますか?

アメリカの法律では、1万ドルを超える国際送金を厳しく管理しているからです。1970年に施行された「Bank Secrecy Act」(銀行秘密法)という法律で、1回の送金が1万ドルを超えると、税務省に報告する義務が発生するだけでなく、取引を処理した銀行がアメリカ政府に取引の詳細を報告しなければいけません。IRS(アメリカの国税庁)

詐欺師はもちろん、アメリカ政府に見つからないように取引をしたいので、原則として、1万ドル未満の金額を要求するわけです。

日本にも似たような「国際送金を報告する」義務がありますが、3,000万円からです。日本は3,000万円、アメリカは110万円(1万ドル)なので、アメリカの方がかなり厳しいのがわかりますよね。つまり、詐欺師は送金の上限が低いアメリカの数字に合わせています。財務省

まとめ

詐欺師は、アメリカの送金に対する法律に抵触しないように1回に求める金額を1万ドル未満にしています。

米兵は辞められるか?

ミリタリー詐欺のよくある話の一つは、「戦争が怖い。助けて。」という類です。たとえば、

詐欺師

〜詐欺師のセリフ〜 兵士になったが、怖いから辞めたい。最近、戦地の状況は一段と悪化してきて、昨日、僕と同じタイミングで入隊した仲間が殺された。もし、それが俺だったら?自分には子供もいる。

詐欺師

俺が死んだら、子供の生活費は誰が稼ぐ?一刻も早くやめたい!子供は持病があるから、子供のそばにいて親として守ってあげたい。でも、軍隊と契約では、解約金を払わない限り、数年間、兵士として戦い続けなければならない。

詐欺師

子供の治療費は高く、今まで貯めたお金はすべて、子供の医療費に使い果たした。だから、手もとにお金はない。俺が死んだら、子供は一体どうなるんだ?お金さえあれば、すぐにでも除隊できるのに…

アカデミー賞のようなドラマチックなセリフですが、このような話は100%詐欺です。

「仕事を辞めるための解約料金」は軍隊としてあり得ません。米軍の実際の入隊・除隊の流れを見てみましょう。

アメリカの軍隊は、契約制です。

初めて入隊する際、まず、8年間の契約を結びます。このため、少なくとも8年間、兵士は国のために身を捧げます。

そして、8年間の契約の期間に入り、仕事を始める時に、もう一つの契約を結びます。この2番目の契約は、実際の仕事の契約(「active duty」の契約)です。この契約の期間は、だいたい3〜6年ぐらいです。

契約に署名した以上、期間満了まで、辞めることはできません。

active duty」契約期間が満了したのち、更新するかどうかは、兵士本人が決めます。更新期間は将校と相談する形で決めますが、最低2年間になります。

繰り返しになりますが、米軍は契約を任意に解約できません。なぜ兵士は自由に辞められないでしょうか?

一緒に考えましょう。もし、兵士が派遣社員のように勝手に辞めたら、戦争の時、怖くなったと言って兵士が辞める可能性もあるので、国の防衛は成り立ちません。そのため、軍隊は任務の期間を契約で定めており、私事で辞めることは許されていません。

もちろん、「逃げる」という手があります。逃げた場合は、「脱走兵」になり、見つけられたら刑務所に入ります。(2000年以降、刑務所期間は長くても2年間となっています。)

どうしても個人の都合で辞めたい場合は、「involuntary discharge」(不本意除隊)か「dishonorable discharge」(不名誉除隊)となってしまいます。この、軍隊ならではの懲戒免職になってしまうと、除隊後の就職が極めて厳しくなります。

不名誉除隊
レイプや殺人のような重罪を犯した時に適応されます。現役兵士が犯罪をおかした場合、まず軍隊専用の刑務所に入ります。定められた期間が完了すると、不名誉除隊で軍隊から追い出されます。「dishonorable discharge
不本意除隊
「兵士で居続けることが難しい、止むを得ない理由が発生してしまった」時に適応されます。「involuntary discharge

たとえば、

  • 本人の健康の問題(体重管理ができないことを含む)
  • 障害者になってしまった(体でも精神的でも)
  • 家族の事情(妊娠したなど)
  • 何回も指示に逆らった
  • 仕事がなかなかできない、あるいはあまりしない、指摘を受けても改善されない
  • 違法ドラッグの使用
  • アルコール依存、更生も失敗 除隊の形式について

上記のようなことがあった場合、将校の判断にもよりますが、除隊することは可能です。しかし、いずれにせよ、お金は関係ありません。

米軍は、「お金を渡してなんとかなる」といった、賄賂が通じるような組織ではないのです。

まとめ

米軍は、勤務期間が契約で定められています。理由はどうであれ、簡単に辞めることはできません。万が一契約未了で辞めてしまったら、今後の就職がかなり厳しくなります。

この記事は、『米軍ミリタリー詐欺』の電子書籍から抜粋。

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